IT導入補助金2026はどう変わった?名称変更と通常枠の要点を解説
「IT導入補助金2026」と呼ばれることが多い制度は、2026年度から正式名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。本記事では、過去にIT導入補助金を利用したことがある方・これから検討する中小企業の担当者向けに、2026年度の制度でどこが変わったのかを、申請件数が最も多い「通常枠」を中心に整理します。数字や要件は2026年10月9日版の公募要領に基づいていますが、締切回・年度によって変更される可能性があるため、申請前には必ず事務局の最新情報をご確認ください。
12026年度の最大の変更点は「名称」と「対象範囲」
この制度は、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金(旧称:IT導入補助金)」という名称になりました。従来の「IT導入補助金」という呼び方は現在の正式名称ではありませんが、検索や会話の場では今も広く使われています。本記事でも検索性を考慮して「IT導入補助金2026」という表記を使っていますが、公的な書類や事務局とのやり取りでは正式名称「デジタル化・AI導入補助金」を使うようにしてください。
名称変更にあわせて、対象となるITツールにAIを活用したソフトウェア・サービスが明確に含まれるようになった点も特徴です。ただし、基本的な申請の仕組み(IT導入支援事業者との共同申請、プロセス数に応じた補助額など)は、従来のIT導入補助金から大きくは変わっていません。
デジタル化・AI導入補助金には、通常枠のほかにインボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。本記事は、申請件数・利用シーンともに中心となる通常枠に絞って解説します。他の枠の詳細は公募要領でご確認ください。
2通常枠の対象者・基本要件
通常枠の対象は、日本国内で法人登記され国内で事業を営む法人、または国内に実施場所を持つ個人事業主です。業種ごとに資本金・従業員数の基準があり、たとえばサービス業は資本金5000万円以下または従業員100人以下、小売業は5000万円以下または50人以下、製造業・建設業などは3億円以下または300人以下が目安となります。自社がどの区分に当たるかは、公募要領の該当表で確認しておくと安心です。
基本要件として、次の項目をすべて満たす必要があります。
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上であること
- GビズIDプライムを取得していること
- IPAの「SECURITY ACTION」で★一つ星または★★二つ星を宣言していること
- 申請者本人が管理する携帯電話番号を登録していること(SMSで通知が届きます)
- 国や中小機構などの他の補助金と重複する事業を含まないこと
加えて、3年間の事業計画の中で「労働生産性」を1年後に3%以上向上させ、計画期間の年平均成長率も3%以上とする計画が必要です。労働生産性は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷年間の総労働時間」で計算します。
過去にIT導入補助金2023〜2025の通常枠などで交付決定を受けた事業者は、労働生産性の年平均成長率が4%以上に引き上げられます。「前に使ったことがあるから今回も同じ条件」と思い込まず、過去の利用実績を確認してから計画を立てることをおすすめします。
3補助額・補助率の仕組み
通常枠の補助額は、ITツールが対応する「プロセス数」によって区分が変わります。プロセスとは、ITツールが持つ機能を業務分野ごとに分類したもので、顧客対応・販売支援、決済・債権債務、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務、各業種固有の業務、汎用・自動化・分析ツールの7区分があります。
| プロセス数 | 補助金申請額 | 補助率 | 賃上げ要件 |
|---|---|---|---|
| 1プロセス以上 | 5万円〜150万円未満 | 1/2以内(条件を満たせば2/3以内) | 加点項目(過去の交付決定事業者は必須) |
| 4プロセス以上 | 150万円〜450万円以下 | 1/2以内(条件を満たせば2/3以内) | 必須 |
補助率が2/3以内に引き上げられるのは、「令和7年10月〜令和8年9月の間に、その期間の地域別最低賃金以上〜令和8年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が、全従業員の30%以上である月が3か月以上ある」事業者です。該当する場合は「賃金状況報告シート」の提出が必要になります。
この対象期間は注意が必要です。令和8年4月に公表された概要資料では「令和6年10月〜令和7年9月」と記載されていましたが、2026年10月9日版の公募要領では「令和7年10月〜令和8年9月」に変更されています。過去の資料をもとに判断すると対象期間を誤認する可能性があるため、最新の公募要領を必ず確認してください。
補助対象になる経費・ならない経費
補助対象経費は大きく「ソフトウェア」「オプション(機能拡張・データ連携・セキュリティ)」「役務(導入コンサルティング・導入設定・保守サポートなど)」に分かれます。ソフトウェアの月額・年額のサブスクリプション費用は最大2年分まで補助対象になり、役務費用の合計は200万円が上限です。
一方で、次のような費用は補助対象外です。
- 交通費・宿泊費、消費税
- 補助金の申請・報告にかかる申請代行費
- 利用金額が定まらないもの、無償提供されているもの
- リース・レンタル、中古品
- 交付決定前に購入・契約したITツール
交付決定前に契約・発注・支払いをしてしまうと、原則として補助対象外になります。ITツールの選定や相談は交付決定前に進めて構いませんが、契約・支払いは「交付決定の連絡が来てから」が鉄則です。
4申請〜補助金受け取りまでの流れ
通常枠の申請は、おおむね次の流れで進みます。
- IT導入支援事業者に相談し、ITツールを選ぶ(この時点ではまだ契約しません)
- GビズIDプライムを取得する
- IT導入支援事業者から「申請マイページ」に招待され、開設する
- IT導入支援事業者が事業計画・ITツール情報を入力し、申請者本人が内容を確認・宣誓したうえで提出する
- 交付決定(事業者名・法人番号・所在地が事務局のホームページで公表されます)
- 交付決定後にITツールを契約・発注し、納品・導入・支払いを行う
- 実績報告を行い、補助金額が確定したのち、補助金が交付される(後払い)
- 事業計画期間の3年間、毎年「効果報告」を行う
| 交付申請期間 | 2026年3月30日〜(締切回ごとに順次公表) |
|---|---|
| 直近の締切目安 | 第5次9月29日・第6次10月30日・第7次12月1日(令和8年8月時点のリーフレットによる案内) |
| 補助事業の実施期間 | 交付決定日から6か月程度 |
| 支払い方法 | 銀行振込またはクレジットカード1回払いのみ(現金・分割・リボ払い・第三者名義は不可) |
| 必要書類(法人の場合) | 履歴事項全部証明書(3か月以内)、法人税の納税証明書(その1またはその2)、直近の貸借対照表・損益計算書 |
締切回のスケジュールは今後も更新される可能性があります。最新の締切日は、事務局ポータルサイトで必ず確認してください。
5過去にIT導入補助金を使ったことがある方が特に注意したい変更点
2026年度の制度は、過去の交付決定実績によって条件が変わる仕組みが増えています。すでにIT導入補助金を利用したことがある事業者は、次の点を確認しておきましょう。
IT導入補助金2025の通常枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12か月以内は2026年度の通常枠に申請できません。過去の交付決定日を確認し、申請可能なタイミングかどうかを事前にチェックしてください。
150万円未満の申請でも、過去に交付決定を受けた事業者は賃上げ要件が必須項目になります。また労働生産性の年平均成長率も、初めて申請する事業者は3%以上ですが、過去の交付決定事業者は4%以上が求められます。
2024年度・2025年度に導入したソフトウェアとプロセスが重複する場合は減点され、完全に一致する場合は不採択になります。前回とまったく同じ内容で再申請することは避け、プロセスや目的を明確に変える必要があります。
賃金引上げ計画などで加点を受けて採択されたにもかかわらず、要件を達成できなかった場合は、18か月間、中小企業庁が所管する他の補助金で大幅な減点を受けることになります。加点項目は「達成できる見込みがあるか」を慎重に検討してから選びましょう。
6よくある誤解・注意しておきたいポイント
「通常枠」と他の枠を混同しない
インボイス枠やセキュリティ対策推進枠は、対象ツールや補助率が通常枠とは異なります。たとえばインボイス枠(インボイス対応類型)は会計・受発注・決済ソフトとPC・タブレット、レジ・券売機などが対象で、補助率も50万円以下は3/4(小規模事業者は4/5)など、通常枠とは別の仕組みです。自社が検討しているITツールがどの枠に当たるのかを、IT導入支援事業者に確認しましょう。
返還・取消しになるケースがある
交付決定を受けて終わりではなく、3年間の効果報告が必要です。次のような場合は返還や交付決定の取消しの対象になります。
- 賃上げ要件(事業場内最低賃金・1人当たり給与支給総額)が未達のまま計画期間が終了した場合
- 賃上げが必須の事業者が、効果報告前に事業を辞退した場合(賃上げ要件未達とみなされ全額返還)
- 導入したITツールを、導入日から1年未満で利用しなくなった場合(加算金・延滞金が発生することがあります)
- 従業員への賃金引上げ計画の表明をしていなかったことが、交付決定後に発覚した場合
自己負担を減らすためのキャッシュバックやポイント還元、クーポンによる実質値引きなどは禁止行為とされています。発覚すると交付決定の取消しや事業者名の公表につながるため、通常の価格・条件での契約を前提に検討してください。
申請は「代行」ではなく「共同申請」
通常枠の申請は、IT導入支援事業者が事業計画やITツール情報の入力をサポートしますが、最終的な確認・宣誓・提出は申請者自身が行う「共同申請」の仕組みです。申請マイページのIDとパスワードを第三者(IT導入支援事業者を含む)に渡すことや、申請者自身が行うべき手続きを代わりに行う「なりすまし」は禁止されています。「申請代行」や「丸投げOK」とうたう案内があれば、制度の趣旨と異なる可能性があるため注意してください。
7採択実績から見える傾向
過去の通常枠の採択実績は、IT導入補助金2024が申請25,140件に対して採択16,540件(採択率約66%)、IT導入補助金2025が申請23,672件に対して採択8,936件(採択率約38%)でした。年度によって採択率は大きく変動しており、過去の実績が今後の採択を保証するものではありません。2025年度は全枠合計で申請80,439件・採択35,202件となり、業種別では建設業(21.3%)、卸売・小売業(17.2%)、宿泊・飲食サービス業(10.6%)の割合が高く、採択者の9割以上が従業員50名未満という傾向も見られます。
こうした傾向はあくまで過去の実績であり、自社の業種・規模だからといって採択が有利・不利になるとは限りません。労働生産性の事業計画や賃上げ要件への対応状況が、採択の可否に大きく影響すると考えられます。
8まとめ:2026年度は「名称変更」と「過去利用者への条件厳格化」がポイント
IT導入補助金2026(正式名称:デジタル化・AI導入補助金)の通常枠は、基本的な申請の流れこそ従来と大きく変わりませんが、名称変更に加えて、過去に交付決定を受けた事業者への要件が年々厳しくなっている点が大きな変化です。初めて申請する方は基本要件と事業計画の作成に、過去に利用したことがある方は再申請までの期間制限・労働生産性要件・プロセスの重複に、それぞれ注意して準備を進めることをおすすめします。
制度の全体像や、通常枠以外の枠(インボイス枠・セキュリティ対策推進枠など)については、別記事「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)とは?2026年版の基本を解説」もあわせてご確認ください。
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補助金制度を活かした社員教育の準備を、無理なく進めませんか
デジタル化・AI導入補助金の通常枠は、教育訓練向けのITツールも対象になり得る制度です。eラーニングの活用イメージや自社に合う進め方について、気になる点があればお気軽にご相談ください。
本記事の情報は公開時点(2026年10月)のものです。











